こんにちは、ピュアネットジャパンの関根です。
とても暖かな気候になってきましたね。ポカポカ陽気になってくると嬉しい反面、お米を扱う仕事をする者にとって、共通の悩み事は「虫」ですね…。
昼夜を問わず、冷房をガンガンかけたり、せっせと低温庫にお米を運んだり…。
今回は、そんなコメ虫にまつわるお話です。
思い起こせば、米パニックのあった平成5年の不作の翌年、当時まだ小売店店主だった私は、お客様から「余ったタイ米」を引き取ったことがありました。
ウチではタイ米を扱っておりませんでしたので、当然のことながらよそのお店で購入されたものなのですが、お客様曰く「買ったお店に返すわけにもいかないし、お米だから捨てるのもバチがあたりそうだし、引き取ってくれないかしら…?」ということで、わずか1kgほどでしたが、ビニール袋に入ったタイ米を引き取ってきました。
しかしながらどうにも食べる気にもなれず、かといって、やはり捨てるのも忍びないしと思いつつ、そのまま倉庫の片隅に放置しておきました。
そして半年ほどたった頃、ふと目に止まったそのタイ米を見てビックリ!
まったく変わらないままの姿で残っていたんです。
まったく変わらないままで何で驚くんだって?
お米屋さんならすぐピンと来るかと思いますが、通常半年も常温でお米を放置しておくと、普通のお米なら虫が湧くんですね…。
ちなみにコメ虫は18℃を超えると活動をし始め、22℃を超えると卵が孵化すると言われています。
当時のウチの倉庫は、お世辞にも良い環境といえるものではありませんでしたので、普通のお米を同様に放置すればあっという間に虫が湧いてしまいました。
そしてその後、放置されたタイ米観察を続け、結果的に一年経っても、そのお米には虫が湧かなかったんです。
理由はまず間違いなく、ポストハーベスト農薬でしょう…。
輸出のために船積みをする時、裸の白米(玄米ではなく精米したもの)を麻袋に詰めて、その上から防虫や防カビの消毒液をかけるのだと聞いたことがあります。
これがポストハーベストと言われるものです。
こうした事実を知ったのは、1994年(平成7年)に出版された「輸入米は危ない」(江波戸哲夫・小若順一著/エイト社)という一冊の本でした。
この本を読んで、虫が湧かなかった「あのタイ米」の理由がわかったんですね…。
やっぱり、食べなくて良かった!!
この本によれば、平成5年当時輸入したお米の大半は、虫が湧かないどころか、コメ虫を入れると、なんとその虫が死んでしまうほど、ポストハーベスト農薬が残留していたというんですね。
この事実は1993年11月に、NHK、テレビ朝日、日本テレビ等のニュース番組でも報道されたそうです。 残念ながら現在その本は絶版となってしまいましたが、内容はとてもショッキングなものでした…。
詳しくはまた別の機会にお話しようと思いますが、FTAやWTO交渉では、日本への米輸入自由化が常に焦点となっていますので、本当に怖ろしいのはこれからなのかもしれませんね…。
政治的な歯止めはいつ崩れるかわかりません。
そんな中、できれば一人でも多くの人が、こうした食の安全について関心を持つことが大切なのではないか…と思う今日この頃です。
今回はちょっと怖い話でしたが…、それでは、また来月!
《2007年6月1日発行 「玄米工房情報ふぁ〜む」コラム記事 関根珈琲舎より》