農家と直接契約での仕入れ、メリット・デメリットと、失敗しないコツ。

「お米も自由化になったことだし、産直ブームだし、農家と直接契約でお米を買い付けてみよう」と、気軽に農家と契約して失敗するお米屋さんが意外に多いことをご存知ですか?

 

食管法時代の習慣を引きずっている”農家との直接契約を安易に行ってしまうと、大きなリスクを抱えてしまう危険性があります。

 

当初は順調と思えても、そのリスクは流通が大きくなればなるほど大きな問題となってきます。 

 

こうしたリスクや失敗を回避するには、農家との直接契約のメリット、デメリット(特にデメリット)を良く把握し、リスクを未然に防ぐ対処をしておく必要があります。

 

それでは、さっそく農家直接契約のメリットデメリットを解説するとともに、仕入れに失敗しないコツを伝授しましょう。

 

農家と直接契約で仕入れる場合のメリット

 

【メリットその1】安く仕入れられる 

まずメリットとして第1に挙げられるのは、やはり価格でしょうね。

 

最近では少しでも仕入原価を下げられればと、農家に目を向けるお米屋さんも増えてきました。 

価格競争がますます激化する中で、やはり仕入れ原価を少しでも下げたいと思う気持ちは良くわかります。

 

 

【メリットその2】農家の顔が見える、出所がはっきりできる

最近の米穀業界では、「トレーサビリティ」という言葉を良く使います。

「トレーサビリティ」とは、栽培や流通の履歴をいつでも追跡できるよう明確にすることです。

 

以前、マスコミ報道で話題になった事故米、汚染米の問題や、食品偽装事件などがきっかけとなり、商品の出所や流通過程、製造工程などを明確にするというは、当たり前となってきました。

 

そうした意味では、流通を単純化するということで農家直取り引きにはメリットがあります。

 

ただし、すべての農家が栽培履歴をきちんとつけているわけではありませんし、栽培履歴や流通を明確に提示する作業は、仕入れるお店に責任と負担が生じますので、その点は注意が必要です。

 

 

【メリットその3】他の店にはないオリジナル商品になる

日本では、昔から「一町農家」という言葉があるように、一町(1ヘクタール)程度の作付けをする兼業農家がとても多いんですね。

ですから農家さんと直接取引きをすると、「農協出荷以外の取引先は、あなたのお店だけです。」という可能性も非常に高いのです。

ですから良い農家と出会うことができ、農家と共に特徴のある商品として育てることができれば、貴店にしかないオリジナル商品となりえる可能性もあります。 

 

ただし農協にしか出荷したことがない農家さんは、私の経験上、取り引きが非常に難しいのも事実。

これはについては、デメリットの項でまた詳しくご説明致します。

 

 

農家と直接契約で仕入れる場合のデメリット

農家との直接契約でのデメリットは、やはり「リスク」と「労力」の問題が大きいですね。

私自身のこれまでの経験をもとに、直接契約する場合の注意点なども踏まえて、ひとつずつご説明したいと思います。

 

 

【デメリットその1】良い農家に出会える可能性が低い

これはあくまで、お米そのもの、商品価値のあるお米を生産してくれる農家と出会える可能性という意味での出会いの可能性です。

味や安全性、品質はどうでもいいから安く仕入れたいということであれば話は別です。

 

でも今、これを読んでいる方の多くは、価格競争に巻き込まれないためにも、美味しくて、安全で付加価値性の高いお米を探したいと思っていることと思います。

 

生産者は百人百様…。

生産者自身の性格が、信じられないほど作るお米に出るんです。

 

生産現場でお米の食味に影響する三大要因をご存知ですか?

土門剛さんという方が著書「新食糧法で日本のお米はこう変わる(東洋経済新報社)」の中でも書いていますが

 

大事な順に

@種

A人

B自然

だと言われています。

 

@の「種」というのは、コシヒカリや、あきたこまち、ひとめぼれといった「品種」のことです。

Aの「人」というのは、生産者自身が施す「肥料設計」や、「土作り」、「乾燥調整」などの生産技術を指します。

Bの自然というのは、「土質」、「水質」、「気候」といった自然条件のことです。

 

土門剛さんも著書の中で、「栽培技術さえしっかりしていれば品種や自然条件が少々劣っても、そこそこの食味は出せる」と言っていますが、私の経験上でも、生産者の栽培技術は一番大事な要素だと痛切に感じています。

 

ちょっとした魚沼産のお米より、栽培の上手な埼玉の生産者のお米の方が美味しかったなんてことは、当たり前にある話です。

 

うちの主人は魚沼のお米しか食べないんだけど、この間、勧めていただいた茨城のお米を、試しにだまって出してみたら、「今日のお米はやけに美味いな!」って主人が言うのよ!

(実は、弊社の流通の中で、お客様からこうした言葉をいただいたことは数え切れないほどあります。)

 

なぜこれほど違うのかということについては、「間違いだらけのお米選び〜農家直送米の仕入れ編」として、別に記事を書いておりますので、そちらをご参照下さい。

 

「間違いだらけのお米選び〜農家直送米の仕入れ編」を読みたい方はこちら

 

さて首尾よくこうした生産者と知り合うことができれば、本当に良いのですが、実はこれがなかなか難しいんですね…。

 

私自身もこれまでに100名以上の生産者さんとのお付き合いを繰り返し、お会いした生産者さんを数えれば、数百名といった数の方々とお会いしてきました。そんな中での失敗も多々あります。

 

特に食管法が新食糧法に変わり、お米の流通が自由化してからというもの「オレのお米は日本一美味いんだ!」と言ってはばからない営業上手な特別栽培農家が、にわかに増えたので、その判断は本当に難しいです。

 

お米屋さんといえども、農家さんは全くの異業種です。

「オレはこういう資材を使って、こんな風に手をかけて作っているんだ。だからオレのお米は日本一美味いんだよ!」って言われれば、普通のお米屋さんなら「う〜ん、なるほど!」って唸ってしまうのは、当たり前のこと…。

 

さらには、こうした特別栽培農家が意外に少ないということもありますので、全国に散らばった特別栽培農家の中から優良な生産者を見つけるというのも、多大な時間と労力を要します。

 

ちなみに農林水産省生産局農業環境対策課が平成20年8月に発表したデータによれば、全国の有機栽培米が占める割合は、なんと全体のたった0.13%しかありません。

この年のお米の国内総生産量が8,556,000トンだったのに対し、有機栽培米はわずかに10,811トンでした。

 

減農薬で栽培する特別栽培米農家は、これよりまだまだ多いですがそれにしても全体からすればほんの10%〜20%程度といった数字でしょう。

 

本当に優秀な生産者を探そうと思えば、時間と労力をかけて、東奔西走しながら本当に信頼のおける生産者を判断する目を養うことが大切です。

 

 

【デメリットその2】1年分を確保しなければならない…『仕入れリスクの大きさ』

平成7年に食管法の改正でお米の流通が自由化されるまでは、農協への出荷というのが流通の基本でした。

 

農家は、その秋に収穫したお米をそのまま農協へ出荷し、すぐに現金化することができました。

そのお金で農家は、その年に購入した肥料や農薬、農機具等の一括精算をします。 

これは日本全国、どこのお米農家も同じ

 

ですから農家に直接お米を分けて欲しいといった場合は即、現金精算は当たり前。

穫れ秋に一括でお米を受け入れ、即現金化する農協に代わって、お米を買い入れるわけですから、当然のことですよね!

 

もし一年間販売するお米を契約しようと思ったら、すべてのお米を一括引き取り、現金で即支払というのが原則になります。

 

取り引き量が少ないうちは良いのですが、量が多くなればなるほどリスクが大きくなって行きます。

大量に在庫を抱えるリスク、潤沢な資金があればいいですが、ない場合は借入金のリスク、そして金利…。

 

そして1年後に古米になった時は、信じられないほど商品価値が落ちてしまいます。

ちなみに特別栽培米や、有機栽培米であっても、1年後に古米となって業者に売り払う時には一般の古米と一緒の扱いになります。

 

ですから新米時に仕入れた原価から1俵につき10,000円以上の逆ザヤ(マイナス)になってしまうことも珍しくありません

(私もこれで大赤字を出したことが何度かあります…。) 

 

そして農家さんと信頼関係ができて、例えば農家さんで在庫を持っていてくれるという話になっても、前渡し保証金を預けることや、全量引き取り確約が条件になるのが普通です。

 

また農家が在庫を抱える場合、農家の方で品質を劣化させてしまうリスクもあります。

農家の庭先ではネズミにかじられてしまったり、カビが発生したりということも、決して珍しいことではありません。

 

そうした点も良く話し合っておかないとトラブルの元になります。 

 

 

【デメリットその3】出来が悪い年にも引き取らなければならないリスク

いくら自由化したとはいえ一般の農家の心情としては、農協に出荷せず、他に販売することのリスクを、とても大きく感じています。

なぜなら大半の農家は、農協からお金を借りたり、種もみや肥料、農薬などの資材を買ったり、穀物(等級)検査を受けたりと、いろいろな面で農協と接点があるからです。

 

ですから農家が農協に背を向けて、他へ販売する時には、よほどの覚悟をしなければなりません。

他で売れなくなったから、また農協に出荷をお願いするというのは、農家にとっても非常にバツの悪いことです。 

そんなわけで、農家は一度取り引きしたお店には毎年安定して買い入れてくれることを望みます。

 

しかしながらお米は農産物…、お天気次第で、毎年、出来や品質が違います。

出来の良い年はお互いにニコニコで取り引きできますが

出来の悪い年に、「今年は出来が悪いからいらない」…というのは通用しません。

 

このようにお断りした時点で、その農家さんとのお付き合いは無くなってしまいます。

 

【デメリットその4】商売人が当たり前だと思っている商道徳は通用しない

すべての農家さんに当てはまることではありませんが、商売人が当たり前だと思っている商道徳が全く通用しないことがあります。

 

私の経験談なのですが、ある方の紹介を受けて茨城の農家さんを訪ねました。

 

行ってみるとなかなか立派な乾燥調整施設を持っており、特別栽培の認証は取っていませんでしたが、栽培の内容を聞くとずいぶん農薬も少なく、試食してもなかなか美味しい…。

価格も比較的安く、これは商品としてなかなかいけると判断しました。

 

そこでさっそく買い入れることを申し伝え、当初の予定より数を増やすことにしました。

農家さんには、その日のうちに当初の予定より数量を増やしたいと連絡し、

「予定数を計算するのに1日待って欲しい」と伝え、OKをもらいました。 

 

ところが翌日、数量が決まったと連絡したら、「今朝来た業者にすべて売っちゃったので1袋も無い」というのです。

 

本当にビックリしました…。

もちろんこの農家さんとは2度と取り引きすることはありませんでしたが、

私の経験の中で、似たような事件が他にも2〜3度あります。

 

特に業者が良く買い付けに入るような人気産地では、こうしたことは珍しくないようです。

 

 

【デメリットその5】高く買い入れしてしまう…!?というリスク

農家との直接契約のメリットに「安く仕入れられる」というのを挙げているにも拘らず、何か相反することを書くようですが、こうした危険性も決して少なくはありません…。

 

米穀業界では、これまで(財)全国米穀取引価格形成センターでの入札価格が指標になっていたため、米穀卸からの仕入れ価格も、1年のうちに何度も上下するのが当たり前でした。

相場が下がれば安く買えるし、上がれば高くなってしまうわけですね。

 

しかしながら農家との直接契約では、獲れ秋に決定した価格1年間の仕入れ価格です。

「相場が下がったからお金を返してくれ」といってもあとの祭り…。 

 

ですから価格の決定はよほど慎重に行わなければなりません。

 

私も生産者と契約する際には、入札価格や農協の仮渡し価格をはじめ米穀市況をひと通りチェックし、特別栽培米や、有機栽培米などは一般米相場から、さらに栽培にかかった手間や、その付加価値に見合った加算金を上乗せして、生産者との契約価格決定します。

 

…ですが本音を言うと、たとえ同じ地域の生産者であっても、それぞれに栽培の内容や、考え方全く違うので本当に難しいです。

 

当然のことながら、生産者は自分が手間ひまかけて最大限の付加価値をつけているわけですから少しでも高く買い入れしてくれることを望んでいます。

逆に、買い手は少しでも安く買いたいと思うわけですから、その妥協点は難しいですよね。

 

私も生産者との相対取引ばかりを15年もやってきましたが何度も失敗しました…。

 

また新しい生産者と出会い、産地まで出向いたのに、全く価格が折り合わず契約に至らなかったことも何度かあります。

 

契約に至らなかった時の価格というのは「ちょっと高い」どころではなく、農家と直接契約のはずなのに提示された価格が、スーパーの小売価格並みの値段だったのです。

 

私の経験では、こういう高い価格提示をする農家は、2ヘクタール以下くらいの比較的小規模な農家で、かつ、自分で通販などの直売をやっているところが多いようです。

 

私の場合には、せっかく新潟まで行って、契約に至らなかったこともありました。

 

初めて取り引きする農家と、会う前からの価格交渉はしにくいものですが、産地に出向く前に、大まかな価格の指標だけでも打ち合わせしておくことを、ぜひオススメします。

 

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