宮沢賢治の食卓は日本人の理想!? 2007年2月1日記事

雨にも負けず 風にも負けず
雪にも夏の暑さにも負けぬ丈夫な体を持ち
欲はなく 決して瞋(いか)らず
いつも静かに笑っている
一日に玄米4合と 味噌と少しの野菜を食べ
あらゆることを自分を勘定に入れずに
よく見 聞きし 分かり そして忘れず
野原の松の 林の蔭の 小さな茅葺きの小屋にいて
東に病気の子供あれば 行って看病してやり
西に疲れた母あれば 行ってその稲の束を負い
南に死にそうな人あれば 行って怖がらなくてもいいと言い
北に喧嘩や訴訟があれば つまらないから止めろと言い
日照りのときは涙を流し 寒さの夏はおろおろ歩き
みんなにデクノボーと呼ばれ
ほめられもせず 苦にもされず
そういうものに 私はなりたい

銀河鉄道の夜や、セロ弾きのゴーシュなどで有名な宮沢賢治は農業学校の教師を経て、農業人としても知られていますが、晩年の作品の「雨ニモ負ケズ」は皆さんもよくご存知のことと思います。(右参照)


ところでこの詩に「一日に玄米四合と味噌と少しの野菜を食べ…」という一節があるのをご存知ですか?

「宮沢賢治(の時代)って、こんなお粗末な食事で、雨にも風にも負けない丈夫な体って出来るのかな?」なんて思う方もいるのではないでしょうか。


さて、この1日4合という玄米ですが、実は現代人が食べるお米の、約3.5倍の量なんですね。

1合を約150gとして計算すると、宮沢賢治は1年間に216kg食べていたことになります。
ところが現代人は平均で年間約60kgしか食べていません。

一汁一菜イラスト_s160.jpg
4合といって、ちょっとピンと来ない人には、ご飯にして1日に茶碗8杯と言えばわかりやすいかな…。
白米ではなく玄米ですから、アゴの弱い現代人が玄米をこれだけ食べるとしばらくはアゴが痛くて大変な思いをしてしまうかもしれません。

さて、玄米が美容や健康に良いというのは、テレビや雑誌などの特集で、ご存知の方も多いかと思いますが、具体的に玄米に豊富に含まれる栄養価は何かと言いますと、食物繊維、ビタミンB1、B2、ナイアシン、ビタミンE、鉄分、脂質などが特に多く、それぞれ精白した白米の2〜4倍は含まれています。


江戸時代に原因不明の奇病「江戸わずらい」として恐れられた「脚気」(かっけ)も、精白技術が進歩して白米を食べるようになってから、ビタミンB1不足が原因で起きた流行病でした。
脚気は、明治時代になっても年間2万人の死者を出し、大正時代にもなお原因が解明できず、昭和の初期まで流行した大変な病気でした。


昔、健康診断のとき、脚気の検査として、ひざをトントンと叩かれた記憶がある方も多いでしょう。
それだけ玄米に含まれるビタミンB1は日本人の体に必要な栄養価だったということですよね。
さて、これらの玄米の栄養価を表にまとめてみました。(下表参照)


ちなみにビタミンB1を見てみると人間が一日に必要な量1mgに対し白米なら25杯のところ、玄なら3杯で摂取できるわけです。比べてみるとスゴイですよね!

さて表の中で、ビタミンB2については、玄米でもちょっと足りない気がしますが、実は、食物繊維を豊富に取る事で増える腸内乳酸菌がビタミンB2を体内で生成することがわかっています。


さて、1日に4合の玄米を食べる宮沢賢治ですが、表の一番右のデータを見ていただいてわかる通り、玄米だけで、かなりの栄養を確保していたことがわかります。


豊富な食材で、栄養の取れる現代ですから玄米食にするべきだなんて乱暴な事を言うつもりはありませんが、これだけ栄養の豊富な玄米をキレイに削り取って白米にしてしまうのは、とても
もったいない気がします。


まずは少しだけ、ぬかの部分を残した分づき米などで、お米本来の甘味や美味しさを再認識することが、「雨ニモ風ニモ負ケナイ」体づくりの第一歩なのかもしれませんね。

 

1日玄米4合の栄養価の表.jpg
※表のデータは、茶碗1杯200gにて計算してあります。